移住・定住、「まちの魅力」発掘中! 県内の地域おこし協力隊員に聞きました!!

愛媛が好きですか。ずっと愛媛で暮らしたいですか。
「愛媛はいいところ」ってよく聞くけれど、愛媛の魅力って何でしょう?
生まれ育ったまちや都会を離れて、愛媛へ移住した人たちがいます。
愛媛だからこそ実現できる夢に向かって挑戦しています。
移住者の目線で見た愛媛の姿や愛媛の良さについて、
県内の自治体で地域おこし協力隊員として活動してきた2人に聞きました。

  • 岩橋 洸平さん 大阪府出身・東温市に移住
  • シーバース玲名さん 神奈川県出身・西予市に移住

岩橋 洸平さん

  • 「半農半X」の暮らし、SNSで発信中

     東温市地域おこし協力隊員の岩橋洸平さん(25)は生まれも育ちも大阪府。大学卒業後、大阪市内の工業機器の専門商社に就職しましたが、かつて東南アジアを旅行中に現地の人たちの「かつかつしていない生き方」に触れ、「仕事だけではないのびのびした暮らし」にずっと憧れていたと言います。「このまま会社勤めをしていたら、やりたいことをやらない人生になりそう」と一念発起し、2020年9月に東温市井内地区に移住しました。

  • 「山が荒れると、まちも困る」

     井内地区は旧川内町中心部から車で15分ほどの、美しい棚田が広がる山あいの集落です。岩橋さんは約12アールの土地を借り、地区特産のシキミを栽培しています。お墓や仏壇に欠かせない植物ですが、高齢化で生産者は年々減少。地区では耕作放棄地をシキミ畑に整備し直すなど山を守る努力を続けています。農業は初挑戦の岩橋さん。「草刈りは大変ですが、山が荒れると結局は市街地に被害が及ぶ。少しでも山の手入れにつながるなら」と一から教わりながら、シキミを市内の産直市場に出荷しています。 また、地域の田植えや稲刈りの手伝いをしたり、野菜の自家栽培に取り組んだりもしています。シキミをはじめ農産物の収穫体験イベントを通じ、新たな地区の担い手を探すのも、重要な任務です。情報発信には会員制交流サイト(SNS)をフル活用。「井内地区はフォトジェニックな風景がいっぱい。ここでの経験を伝えないのはもったいない」と、協力隊活動はもちろん、趣味の音楽、食べ歩きなど、ブログやツイッターでほぼ毎日発信しています。2020年10月からは動画配信サイトで、協力隊員仲間と東温市の魅力を伝える番組も流しています。県内外からコメントや反響が寄せられ、手応えを感じているといい、「僕らの取り組みを見てもらうことで、興味のある人が来てくれればうれしいです」。

  • 「つながりやすさ」こそ地方の魅力

    「つながりやすさ」こそ地方の魅力

     かねて夢だった宿泊関係の仕事は協力隊活動とは別に修行中。民間施設で接客や料理、地の利を生かしたグランピングなどの提供方法を学んでいます。東温市多世代交流拠点「横河原ぷらっとHOME」でも月に1~2回カフェを開くなど活動は多岐にわたってきました。「〝半農半X〟で、稼ぐ仕事とやりたい仕事をやっていきたい」と意欲的です。
    「東温市は地域を盛り上げる活動をしている人が多く、まちづくりの熱量が高い」と感じています。「こういうことをやってみたいと言えば、すぐ誰かとつながることができる。このつながりやすさこそ、都会にはない最大の魅力。僕みたいな若造でもやっていけると証明できれば、移住や農業に興味を持つ人が現れる。そのためにも日々の体験を自分の言葉で発信し続けたい」。眼鏡の奥の瞳をきらっと輝かせました。

  • 就活生へMESSAGE

    「飛び込んでみる感覚」大切にして

     やりたいこと、やってみてもいいかなと思っていることは、やってみましょう。「やりたいことがない」という人は知らないことが多すぎて何をしたいかが分かっていないだけかも。ネットで得た情報だけで知った気になりがちだけど、経験してみないと分からない。まずはやってみる。予習や準備は大事だけど、頭で考えすぎず、飛び込んでみる感覚を大切にしてください。話すのが苦手だという人は、伝えたいことを文章にしてみる訓練をするといいかもしれません。僕がそうでした。誰に伝えたいかをよく考えながら書いてみる。また、伝えたいことを発信する手段も多様です。文章が苦手な人はインスタグラムに写真を載せるだけでもいいし、自分に合ったやり方で発信すればいいと思います。

シーバース玲名さん

  • 「飲む村」に引かれて ゲストハウス開業

     西予市野村町の商店街から車で5分ほどの集落にゲストハウス「ento house(エントハウス)」があります。2018年の西日本豪雨の災害支援をきっかけに、西予市野村町へ移住した地域おこし協力隊員のシーバース玲名さん(28)=神奈川県出身=が空き家を改修し、21年11月にオープン。人情味あふれる野村の酒文化を発信し、町内外の人の新たな交流拠点にしたいと夢を膨らませています。

  • サシアイで深まる地域の絆

     父が米国人、母は日本人の玲名さん。国際協力に関心があり、非政府組織(NGO)でのインターンを経て都内の広告代理店に勤めていましたが、18年6月に退職。新たな一歩を踏み出す契機が西日本豪雨でした。「前年に通った香川県の自動車教習所で愛媛の知人ができたこともあって人ごとと思えず」、旧知のNGOに連絡を取り、現地調査のサポートドライバーとして愛媛県入り。被災地の調査や支援に当たる中、野村町でも困りごとなどを聞くうちに住民と親しくなり、飲み会に誘われるように。「昔から『飲む村=野村』と言われるほど、お酒や宴会が好きな土地柄。一緒に楽しくやっていこうという姿に、家族のような温かみを感じた」と言います。  中でも興味を抱いたのは「サシアイ」と呼ばれる飲み方。自分のグラスでビールやお酒を飲み干したら相手に渡して酒をつぎ、飲み切ると再び注いでもらって飲む返杯の作法で「つぎ合ってるうちに誰とでも不思議と親しくなれる。同じ場所にいるだけで、世代も超えて仲良くなるのが地方の面白いところだなと」。  野村の活力源ともいえる酒文化で町外から人を呼び込めないか―。思いが募っていきました。商店街には今も多くの居酒屋がありますが、宿泊施設が少ないことがネックと感じ、気軽に泊まれ、観光案内もできる場として、バー付きのゲストハウスを思い立ちます。空き家探しは難航しましたが、「施設は町内外の交流拠点になる。皆さんの家の一つと思って一緒に見守ってほしい」と地域住民と協議を重ね、開業に理解を得ました。

  • 100年先見据えたまちづくりを

    「つながりやすさ」こそ地方の魅力

     借り受けた念願の古民家は、地域の仲間やボランティアの協力も得て木造平屋建ての母屋を宿泊棟に、隣接する鉄骨2階建ての離れの1階部分をバーに改装しました。板を張り替え、宿泊棟はしっくい塗り、バーは珪藻土の壁に。障子には伝統の泉貨紙を用いました。学生時代、ビアバーで働いた経験も生かし、バーではラム酒なども提供します。
     エントハウスの「ento」は「遠図(えんと)」。100年200年先を見据えた展望という意味です。「目先の利益にとらわれがちだが、個々で頑張るだけでは持続可能なまちづくりは難しい。オール野村で人が集まる仕組みを今、考えなければ」。エントハウスを訪れた人の中には、久々に帰省したという地元出身の若者らの姿もあったそう。「集える場があることが大事。ここでイベントを開いたり、情報を発信したり、ゆくゆくは若者が働ける場所にもしたい」。まっすぐな瞳で、野村の未来を思い描いています。

  • 就活生へMESSAGE

    一人で抱え込まず、周囲に頼ろう

     困ったときは勇気を持って周囲に頼りましょう。完璧主義とプライドで人に頼れずに仕事を抱え込み、仕事を辞めた経験があります。努力しないのはだめですが、できないことはできないと言える勇気も必要。誰でも得手不得手はあるし、やれることには限界があります。すべて一人でやれるなら社会の役割も生まれません。不得意なところは素直に伝え、サポートしてくれる人を見つけて一緒に解決する。それで自分も相手もレベルアップすることができます。ゲストハウスを開業できたのも、できないことを打ち明けたら協力してくれる人がいたから。自分の中だけに押し込めず、やりたいことを口に出して、人を巻き込むことはすごく大事だなと思います。助けてくれた人への感謝も忘れないで。